プラハの人事評価制度
📓 大前提
目先のお金とか評価を気にして働く会社ではなく、ものづくりを楽しむ人の会社を作りたいと考えています。
「不自由なく暮らせる程度のお金がもらえたら、あとはものづくりに集中したいよね」というのがプラハの考え方なので、社内のジュニアとシニア層の報酬差はそこまで大きくありません。
会社の調子が良ければ全員昇給するし、調子が悪ければ全員減給する。そんな基本コンセプトに基づいて人事制度を考えています。
🧻 背景: そもそもなぜ評価制度が必要なのか
個人(CEO)的には評価制度を作りたくありません。隙さえあれば無くしたいと考えています。
誰もが評価を必要としているわけではないし、評価にかかる時間をコード書いたりデザインを作る時間に充てたいし、他人を評価すること自体がおこがましいし、低く評価するのは心が痛むし...
じゃあなぜやっているのかと言えば
- 幅広い経験の人と働けるようになる
- 会社の方向性を揃えられる
この2点に帰結します。
幅広い経験の人と働けるようになる
「一人前の人しか採用しなければ評価しなくても済むんじゃない?」というのが創業当初のプラハの考え方でしたが、以下のような問題が発生しました:
- 母集団が小さすぎて採用が進まない
- 「人柄も申し分ないし、これから間違いなく伸びるから、一緒に働きたいなぁ」と思う人でも、報酬額と比較するとコストが高すぎて採用できない
それこそプラハチャレンジの卒業生がプラハを転職先に選んでくれる機会が増えていますが、それも修行中と一人前の給与制度を分けているからこそと言えます。 なので「これからの成長に期待する人にも門戸を開きたい」という思いから新たに修行中枠の給与制度を設け、それに伴い評価制度が生まれました。
会社の方向性を揃えられる
スタートアップに特化した受託開発を行う会社の一員として、必ず身につけなければいけない能力や振る舞いがあると考えています。 その要素を全員に日常的に意識してもらうためには評価に組み込むのが効果的だと考えてたので、会社の方向性を揃えるために評価制度を設けています。
👏 制度の概要
スキルとは
- プラハが考える「一人前の社員として必要な能力」のこと
- エンジニアの場合は以下の通り:
- スキル1:確動性が高いか?
- スキル2:技術者として慣れているか?
- スキル3:学習意欲、能力が高いか?
- スキル4:質の高い開発ができるか?
- スキル5:チームで成果を出せるか?
- エンジニアスキルの詳細はこちら
スキルを会得すると何が起きるのか
- 給料(月額報酬)が上がります
- 5つ全てを会得すると「一人前」と呼ばれる(それまでは「修行中」と呼ばれます)
どうやってスキルを会得するのか
- スキル通過申請シートを埋めて提出する
- スキル通過申請シートはslackの社内限定チャンネル(今はpraha_secret)のbookmarkを参照してください
- 提出を受けたら一人前社員のうち評価に関わりたいと手を挙げた全員が評価を行い、スキルを会得しているか否か判断します
どうやって評価するのか
- 推薦シートを提出していただきます
- 提出されたシートを先述の一人前社員で吟味して、評価を行う
- 必要に応じて別の社員からも意見を募る
- 大体の場合は同じ案件に入っているプラハのメンバー、及びクライアントに追加ヒアリングを行います
評価のポイント
1. 推薦項目の妥当性
- スキル通過を判断する上で妥当な推薦理由になっているか
- 例えばスキル5に対して
- みんなにお菓子を配ってました→妥当だけど単体での昇給材料としては弱い
- コードを書くのが速い→チーム成果と関係ないので妥当ではない
- 例えばスキル5に対して
- 推薦項目に記載されたことは事実か
- クライアント、及び同じチームのプラハメンバーにヒアリングして確認する
2. プロジェクトの期間
- より長くプロジェクトに在籍しているとプラス
- 1ヶ月しかプロジェクトに在籍していない場合、まだ難易度の高いタスクが渡されていない可能性がある。一方、同じプロジェクトに3年所属していれば重要なタスクを任されている可能性が高いため。
- 難易度の高い仕事に挑戦しながらも推薦を受けている人の方が高く評価されるべきだと考えているため、長く参加しているプロジェクトに関する推薦の方が高く評価されやすい
3. プロジェクトの数
- より多くのプロジェクトで推薦されているとプラス
- 特定のプロジェクトでのみ推薦される人より、プロジェクトを問わず推薦される人の方が高く評価されやすい
- より汎用的にスキルを発揮できる人の方が高く評価されるべきだと考えているため
4. 推薦してくれた人数
- より多くのプラハメンバーから推薦されているとプラス
- 特定のメンバーからのみ推薦される人より、複数人から推薦される人の方が高く評価されやすい
- より汎用的にスキルを発揮できる人の方が高く評価されるべきだと考えているため
いつ評価を行うのか
- 毎年決まった時期ではなく、申請のタイミングで評価を行う
- 申請頻度は3ヶ月に一度を上限とする
- なので3月に申請したら次に申請できるのは6月
- 申請が頻繁すぎると他の業務が圧迫されるため
人事制度見直しのタイミング
- 評価に関わる一人前社員が8人を超えた時(全員が集まると会議が非効率なため)
- 1on1などで社内メンバーが給与制度に不満を持っていることが判明した時
この評価制度の問題点
万能の評価制度は存在せず、すべての評価制度には問題がある(不安を抱える人がいる)と考えています。
今の評価制度の問題は以下の通り:
- 一人プロジェクトで一人のクライアントとしか関わらない人が評価されづらい
- フルリモート、かつ各々が全く異なるプロジェクトに関わっているため少ない情報で判断を下さなければいけない
- エンジニアやデザイナーという職種は繰り返し作業が少ない。なので具体的な評価項目を作りづらい
- 前職でもプラハでも「Vue.jsでコレができたら昇給」みたいな細かな評価基準を作ったことがある。維持の手間がかかった割に、誰もその基準を使っていない。すぐ基準が陳腐化した。
- そもそも定量的に判断しづらい職種だから、多数の定性評価を集めて定量的な判断を代替しよう、というのがプラハの評価制度の根底にある考え方
- そのためには多数の定性評価が必要だが、定性評価が集まりづらい条件が揃っている(プロジェクト制、フルリモート)のが今のプラハの評価制度の最大の問題点
この評価制度を廃止する条件
評価制度は基本的に撤廃したいと考えている。以下の課題さえクリアできれば撤廃したい:
- これから間違いなく伸びる!と感じたジュニア層を採用できる
- 全員給与を一律にすると能力に対する報酬が高すぎるため会社としての経営が苦しくなる
- 社内の不満が今より減る
- 「なんでこの人自分より圧倒的にスキルが低いのに同じ報酬なの?」という不満が起きない
- スキルを伸ばすモチベーションがなくならない
- 報酬が一緒なら頑張らなくてもいいや、みたいな
- 会社として大事にして欲しい行動を促せる
- チームの成果を最大化することを考えて動くとか、想像力を働かせて働くとか
- 現実的な負荷で採用面接を実施できる
- 評価をなくすと採用面接で事前に見ておかなければいけないことが増える。ただでさえ重めの面接を実施している+プラハ自体の知名度が足りないため、そもそも受けてくれる人がいなくなってしまう問題
検討された代替手段
- 案件単価のXX%を報酬とする
- 問題1)個人の能力より財布の大きさに案件単価は依存する。極端な話、国の案件を受けたら誰でも給料が3倍ぐらいになる
- 問題2)報酬が乱高下する可能性が高いため、メンバーの生活が安定しない
- 問題3)メンバーの案件変更インセンティブが働くため、エンジニアが短期で案件を移ってしまい、クライアントに迷惑がかかる恐れがある
- 問題4)不公平だと感じる人が出てこないか(二人だけ単価150万円の案件に入っていて、他の人がみんな80万円とか)
- 問題5)「単価の高い案件が来るまで自分は休職してます」などの動機から勤務が不安定になり、離職に繋がるキッカケを作ってしまうこと
- CEOの個人的な心情)フリーランスエージェントっぽくて嫌
❔ FAQ
なぜ申請シートを記述するのか
- 口頭だけで評価を実施してしまうと評価の観点や「何をすれば昇給するのか」などの大切な情報が隠蔽されてしまうから
- 納得感のある制度を作るためにも過去の決定や検討事項は残しておきたい
どうしてクライアントにヒアリングするの?
- 互助会的なもの(あなたを推薦するから私を推薦して)が生まれる可能性を防ぐのと、内輪でどれだけお互いを高評価していても、結局最後はどれだけクライアントの力になれたかが大事なので、必ずクライアントの声も取り入れたいと考えています
- クライアントには「この人が昇給した場合、貴社への請求額が増える可能性もあります」と伝えるので、よりシビアな評価を得られるからです。社内だけだと、どうしてもお互いに対して甘くなってしまうので
スキルを失うことはあるのか?
- 現時点ではない
一度の申請で全てのスキルを通過する可能性もある?
- ある
ずーっとスキルが上がらないこともある?
- ある
平均でどれぐらいの期間で一人前になるの?
- 入社から2年ぐらいで一人前になっているイメージです
人事評価を作ると評価者の顔色を伺う人が増えて、ものづくりを楽しむ会社から逸脱するのでは?
- 自由に働ける一人前になるまでのステップを見直すだけで、一人前になった後はセルフマネジメントに委ねて人事評価はしない。
推薦した人が昇給を拒否した場合は?
- 本人の意思を尊重して昇給しませんがレアケースだと思うので事情を聞かせてもらいたいです!